鏡 | 鏡
Mirror | Mirror
玉木 直子 Tamaki Naoko
岡村 陽子 Okamura Yoko
2019年3月30日(土) 〜 4月9日(火) 12:00-19:00 木曜休廊
March 30 - April 9, 2019 12:00-19:00 Closed on Thursday
見る人間の知識と経験によって作品が解釈されるのならば
作品とはまるで鏡のような存在である
「森のような、煙のような、炎のような、花のようなー」、自分の作品に対してそんな感想をもらうとき、私はそれらの記憶とともに予期せず浮上してきた彼ら彼女らの小さな秘密に触れたような気持ちになる。同じものを見ているのに、違うものが見えている。人(鑑賞者)は作品から眼に見えるものだけを受け取っているわけではないようだ。
例えば私の作品だと、紙を切る・貼り合わせるといった手作業、それにかける時間、反復・連続のリズム、身体を通して表面に現れるイメージなど、これに限らず作品というものは、目に見えるもの・見えないものを含む様々な要素によって成立している。そうした作品の前に立ったとき、人は作品からどのようなものを受け取っているのだろうか。そしてそれは作品を見る人に何をもたらしているのだろうか。
本展覧会では、これらの問いの答えを探る手がかりとして、大学時代の同期であり友人である映像・インスタレーション作家の岡村陽子を迎える。近作において、実体と言葉から距離を置いた彼女の作品からは、以前よりも物語の構造がうっすらと透けて見える。しかしそれとはまた別に、どこか別の世界で私達の知らない何かのために、形の無いものに形を与え続けている、昔と変わらない彼女の姿も見えてくる。そしてその使命のような切実さは見る側の現実にも拡張してくる。私は作り手であるが、ひとりの鑑賞者として、この部分に彼女の作品の持つ力を感じているのだ。
人に変化をもたらすことができるのは、「驚き」や「快楽」といったシンプルな感情を刺激することではなく、もっと深いところにあって、処理するのに時間がかかるような、複雑な感情にアプローチすることであると思う。それらは普段、秩序によって隠され存在そのものが無いことになっていたり、あえて見ないようにされているようなものだけれど、それらは確かに存在しているとても人間的なものであり、「驚き」や「快楽」のように簡単に消費されることのないものだ。創作の役割とは、そういったものたちに形を与え、それらを肯定することなのかもしれない。
人は、他者を認識する際、同時に自分自身を認識しながら世界を広げている。混沌から自分のもつ知識・経験と結ばれるものが立ち上がり、世界が構築されるその様は、鑑賞者が作品に対峙した時の関係にも似ている気がする。人は創作物から思っている以上に他者(作者)の要素を受け取っている。それはメッセージのような具体的なものではなく、たぶん混沌とした抽象的なものだろう。
鏡のように、他者によって映し出される自分自身の姿は時折私達を息苦しくもさせるけど、そこでもがき足掻くことによって生みだされる熱は、生きていることの熱だ。それが、作品によってもたらされるもの、創作による回復、ということなのだろうか。
(企画者・展示作家/玉木 直子)
作家略歴
玉木 直子 / Tamaki Naoko
2006年 武蔵野美術大学造形学部油絵学科卒業
主な展覧会
2006 restructure(ボーダレスアートギャラリーno-ma / 個展)
2008 a standard(遊工房アートスペース / 個展)
2009 recording(遊工房アートスペース / 個展)
2009 Hweilan International Artists Workshop2009(台湾 / グループ展)
2010 an observer in the view(遊工房アートスペース / 個展)
2011 the flowing (尾賀商店 / 個展)
2011 進藤環・玉木直子二人展「記憶の森」(遊工房アートスペース / 二人展)
2012 ループ・アンダーグラウンド(新宿眼科画廊スペースS / 個展)
2013 loop in the forest/輪の森(遊工房アートスペース / 個展)
2014 土屋祐子・玉木直子二人展「パーミエイション」(SAKuRA GALLERY / 二人展)
2015 群馬青年ビエンナーレ2015 (群馬県立近代美術館 / 公募展)
2015 形象への眼差し、光景の眺め(ART TRACE Gallery / グループ展)
2016 北参道オルタナティブ(project kabata / グループ展)
2016 SICF17(スパイラルホール / 公募展)
2017 森、煙、炎、花(ART TRACE Gallery / 個展)
2017 “OPEN TIME”(ART TRACE Gallery / グループ展)
2018 リフレクター(art gallery closet / 個展)
岡村 陽子 / Okamura Yoko
2006年 武蔵野美術大学造形学部油絵学科卒業
2008年 武蔵野美術大学大学院造形研究科美術専攻油絵コース修了
主な展覧会
2007 World's breathing(ギャラリー山口 / 個展)
2008 αMプロジェクト:現われの空間Vol.3(art space kimura ASK? / 個展)
2008 INDEX#4-YES WE CAN DESTOROY-(トーキョーワンダーサイト:東京・ARTZONE:京都 / グループ展)
2010 夢か現か幻か(新宿眼科画廊 / 個展)
2012 空中のガーネット(新宿眼科画廊 / グループ展)
2012 なみゆくながら、着かず、離れず。(アキバタマビ21 / グループ展)
2013 さっぽろアートステージ(札幌駅前通地下歩行空間〈チ・カ・ホ〉 / グループ展)
2015 石のはなし(秋山画廊 / 個展)
2015 ゴジラと福竜丸 ~想像力と現実-ビキニ水爆実験被ばく60周年アート企画
(都立第五福竜丸展示館 / グループ展)
2016 舞殿 ー Maidono ー(秋山画廊 / 個展)
2017 MOUNT ZINE14(MOUNT ZINE / グループ展)